「ほら、これ見てみれ。上手いだろう。」
と、生前、父は言いました。
私は、どなたの似顔絵か、察しがつきましたものの、一応「誰?」と聞きました。
「ほら、あれだ。テレビによく出てくる尼さん」
「瀬戸内寂聴?」
「そう、それ」
数年後、私は父のベッドから、その絵をとり出し、
「この女の人、有名な尼さんでしょ?」と尋ねたら、父の返答は
「知らねぇ。誰だ?そりゃ?」
脳梗塞を3回発症し、後遺症ありの父親が、リハビリ作業の中で、描いてきた絵や、父や父の家族に関する備忘録です。
「ほら、これ見てみれ。上手いだろう。」
と、生前、父は言いました。
私は、どなたの似顔絵か、察しがつきましたものの、一応「誰?」と聞きました。
「ほら、あれだ。テレビによく出てくる尼さん」
「瀬戸内寂聴?」
「そう、それ」
数年後、私は父のベッドから、その絵をとり出し、
「この女の人、有名な尼さんでしょ?」と尋ねたら、父の返答は
「知らねぇ。誰だ?そりゃ?」